看護師さんのためのドレーンの理解と管理講座

腹腔ドレーンの患者の全身チェック方法

(1) 表情や顔色・口調を確認

 

患者さんの表情や顔色に変化がなく、
話しかけたときの受け答えの口調や内容がいつもと同じであれば正常と判断しますが、
表情がぼんやりしえいて顔色が悪い、返事が明瞭ではない時には異常と判断します。

 

表情がぼんやりしていて顔色が悪い時は、血圧の低下が疑われます。
術後出血による多量の出血など急変の徴候かもしれません。
急変を素早く把握するために、脈に触れ、血圧を測るなど、
患者さんの全身状態をチェックします。

 

ドレーン管理というと、どうしても排液だけに注目してしまいがちなのですが、
ドレーン一点だけに集中するのではなく、患者さん全体を見ることが大切です。

 

(2) 排液のアセスメント

 

排液のアセスメントをするときには、まず、チューブをドレナージします。

 

患者さんの状態に問題がなければ、ドレーンから排液バッグまでを確認します。
排液バッグの排液の色や量を見るのは勿論のことですが、
ドレーンに溜まっている排液をドレナージします。

 

ドレーン内が空洞になると、体内から新たに排液が排出されてきます。
この排液には、その時点での体内の状況を把握することができる情報が集約されていますから、
患者さんの今の状態をアセスメントするために必ず行います。

 

正常な排液量の目安

 

一日あたり100ml以下を目安にします。
ただ、患者さんの体重や体格によって排液量も変わってきます。

 

異常な排液量

 

排液量が1時間で100ml以上あり血性の場合は、術後出血の可能性があるので、
患者さんの全身状態を確認します。

 

排液を確認する時には、リンパ郭清の範囲が広い、手術中の洗浄液が回収できていない、
手術前から腹水が貯留していた・・・という時にも排液量が増加するので、
排液の色を確認しておくことが大切です。

 

(3) 排液の色を確認

 

正常な排液の色

 

正常な排液の色は、淡血性 → 淡々血性 → 淡黄色 → 淡々黄色へと変化します。

 

ドレーン内と排液バッグ内の排液を観察し、
排液の色を見て術後の日数経過による変化と前回観察した状態と比べて
どのように変化しているかに注目をします。

 

術後の経過としては、淡血性 → 淡々血性 → 淡黄色 → 淡々黄色へと変化します。
淡黄色になるのは、通常3〜5日後で、淡黄色になればドレーン抜去をします。
排液の正常は、排液バッグへドレナージすると、サーッと流れるようなサラサラの状態です。

 

術後のケアの目的の一つに、「術後の合併症を起こさないこと」があります。
排液の性状から合併症の徴候をつかむことができますから、
術後の経過に伴って起こりうる合併症を理解したうえで、
注意深く観察することがとても大切です。

 

「これは大丈夫」、「これは何かが起こっている」と、
排液や患者さんの状態を見て判断することができる力が必要とされます。

 

異常な排液の色

 

排液の色が、血性や胆汁色(濃黄色または黄土色)、
褐色、赤ワイン色、乳白色、便汁様の場合は、異常があると考え対処します。

 

どの臓器を切除したかによって考えられる異常が異なります。
それぞれ個別に排液の性状の変化とアセスメントのポイントを把握し、
異常を認めたら、直ちに医師に報告するようにします。

 

異常な排液の色

 

・濃血性 : 術後出血
・赤ワイン色 : 膵液漏出
・濃黄色または黄土色 : 胆汁漏出
・褐色 : 縫合不全、腹腔内膿瘍
・乳白色 : 乳び漏(リンパ液漏出)

 

(4) 合併症のアセスメント

 

バイタルサインや患者さんの状態、検査データなどから
合併症が起きていないかを確認します。

 

手術後の経過によって起こる合併症を把握した観察をすることが必要です。

 

バイタルサインの確認

 

バイタルサインの確認では、血圧低下、頻脈、発熱などを注意深く観察します。

 

その他の確認

 

胸部、呼吸の確認をして頻呼吸やSpO2低下などに注意します。

 

腹部の観察では、腹部膨満、腹痛・圧痛、腹膜刺激症状、腸蠕動運動の減弱や消失などを確認します。

 

冷や汗やチアノーゼ、尿量の低下なども観察のポイントとします。

 

考えられる合併症

 

胃切除 : 膵液漏、縫合不全、乳び漏、術後出血

 

膵臓切除 : 膵液漏、出血

 

肝臓切除 : 胆汁漏、出血

 

胆嚢切除 : 胆汁漏、感染、縫合不全

 

腸切除 : 術後出血、縫合不全、腹腔内膿瘍

 

(5) 刺入部・固定の観察

 

刺入部を覆っているガーゼを確認し、
ガーゼに汚れがみられず乾いていれば正常であると判断できます。

 

逆に、ガーゼに滲出液が漏れている場合は、異常であると判断します。

 

刺入部からの漏出臥確認できた場合は、皮膚の発赤やびらんの有無についても観察し、
確認できた場合は、早急に処置を行います。

 

膵液や胆汁などが含まれる排液は、皮膚に接触すると皮膚障害の原因になります。
ドレーンが抜けていないかどうかについても確認します。

 

ガーゼの取り替え時期は、ガーゼに排液の漏れが確認できた時、
或いは、テープのよれや剥がれが確認できた場合に交換します。

 

ガーゼ交換は、患者さんの苦痛を伴います。
患者さんの痛みに寄り添ったケアを心がけることが大切です。

 

患者さんの痛みを理解する

 

患者さんの痛みを理解し、痛みに寄り添うケアが大切ですし、
より効果的な鎮痛薬の使用タイミングを提案する事も看護師の大切な仕事の一つです。

 

術後の治癒促進や体内の状態を把握するためのドレーン管理では、
「異常の発見」に重点を置いてしまいがちです。
ですが、ドレーンが体内に挿入されていることによる拘束感や、
生活動作の制限、さらにはドレーン挿入部の痛みなど、
患者さんの苦痛を理解することはとても大切なことです。

 

手術創の痛みは3〜4日間ほど続きます。
手術創の痛みは回復と共に次第に薄れてきますが、
この手術創の痛みの薄れと反比例するように出現するのが
ドレーン挿入部の痛みです。

 

ドレーン挿入部位の皮膚は手術創と同様に回復しようとするので、
チューブを締め付けて痛みが次第に強くなっていきます。
この痛みが続くと睡眠障害、食欲不振、治療への拒否など
精神的ストレスを招くことがあります。

 

ですから痛みを訴える患者さんに対しては「痛いですよね」と患者さんの痛みに寄り添い、
痛みを取り除くための鎮痛剤の使用を医師に提案します。
日々、患者さんの様子を観察している看護師は、
痛みがどのようなときに起こり、痛みの程度や時間など、
観察から得られた情報を医師に伝えることで、
より効果的な鎮痛剤の処方につなげます。

 

(6) ドレーンの固定を確認

 

ドレーンの刺入部が正しく固定されているかを確認し、
ドレーンが屈曲していないか、外れそうになっていないか、
テープによれや剥がれがないかを確認します。

 

ドレーンの固定テープによる皮膚障害予防のために、
最初に皮膚保護用のスプレーを噴霧し、その上にテープを貼って、
さらにその上にドレーンを置いてテープで固定し、
ガーゼを置いて保護剤を貼付していきます。

 

ドレーンを固定するときは、固定テープに切込みを入れて
固定力を高めること、テープの四隅を面取りすると良いでしょう。

 

テープのよれや剥がれが確認できた場合は、交換をします。
ドレーンが屈曲している場合も、屈曲しないように固定しなおし、
ドレーンが外れかかっている場合は、至急医師に報告します。

 

体位変換時に注意

 

ドレーンの事故抜去の一つに、体位変換時のドレーン抜去があります。

 

ですが、体位変換はとても大切なケアの一つです。
体位変換には、回復促進、褥瘡予防、そして、
排液の自然排出にまかせるだけでなく体位を変えることで
体外へ積極的に死腔に溜まっている滲出液を排出させることを目的としています。

 

手術直後に行う体位変換では、ドレーンが引っ張られないように事前にまとめて持ち、
体位変換後に身体を整えたら、効果的なドレナージができるよう、ドレーンを移動します。
そして、ドレーンが詰まらないように、ドレーンの屈曲や身体の下に入り込んでつぶれていないかを確認します。

 

身体の下側にドレーンが位置する場合は、
体位保持のクッションなどを使って、つぶれないように工夫します。

 

術後翌日からは、医師の判断で積極的に患者さんに動いてもらい、
回復を促す病院が多いのですが、
最初の活動時には看護師が介助し、ドレーンが引っ張られるのを注意して、
「ドレーンを持っていましょう」と説明しながら、事故抜去を予防します。

 

体位を変換することによって、死腔に溜まった滲出液が排出され、
排液量が急激に増えることがあります。
排液の性状や排液量の変化を観察することが大切です。

 

患者さんは、痛みのために身体を動かすことを嫌がったりする事も多いですが、
痛みに寄り添いながら、身体を動かすことにより回復が早まることを説明していきます。

 

有効的に鎮痛剤を使う事ができるよう、医師に患者さんの情報を提供していきます。

胃(膵臓)切除術後

血液の塊が出た

 

胃の手術では、基本的に感染は考えにくいことです。
ですから、ドロッとした性状の液体は排出されませんが、
万が一、血液の塊(コアグラが出た場合は、死腔に血液が溜まっていることを示しています。

 

排液がワイン色

 

胃の手術で膵臓の近くを郭清した場合は、膵頭十二指腸切除をした場合は、
合併症である膵液漏れに注意が必要です。

 

排液がワイン色の場合は、排液中に膵液が混じっているかを確認する検査を行います。
膵液は周囲の組織融解作用があるので、赤ワイン色(褐色調)になった場合は、
膵液の漏れと出血を疑います。

 

大量出血の場合は、ショック症状の徴候として意識が朦朧とし、
血液低下が確認できるので、速やかな処置が必要です。

 

排液が乳白色

 

排液が乳白色の場合は、乳び漏を疑います。
リンパ管が損傷されると、食事開始後に、乳び漏れの症状がでます。

胆嚢切除術後

排液が濃黄色または黄土色

 

排液が濃黄色または黄土色の場合は、胆汁の漏れが考えられるので注意が必要です。

 

胆嚢切除術後は、基本的にノードレーンの病院が多いようですが、
炎症が強い場合は、ドレーンを採用することを考えることがあります。
ドレーンを採用した場合でも、淡々血性で術後2日目には抜去します。

脾臓切除術後

血液の塊が出た

 

血液の塊(コアグラ)が出た場合は、死腔に血液が溜まっていることを示しています。

 

血液疾患や肝硬変で、門脈亢進を止めるために脾臓を切除することがありますが、
件数的にはあまり多くありません。

腹膜炎

悪臭がする

 

腹腔内で炎症や感染が起きると、
性状の変化とともに臭いが変化し、便臭が感じられます。

直腸切除術後

排液が濃血性

 

排液が濃血性の場合は、術後出血を疑います。

 

ドレーンの排液が、一時間に100ml以上で血液が混じっている場合は、
術後出血を疑い、医師に報告します。

 

排液が褐色

 

排液が褐色の場合は、縫合不全が考えられます。

 

縫合不全の場合は、乳白色あら褐色、或いは便汁様に変化し、
便臭がある場合は縫合不全の可能性が高いです。
排液が褐色の場合は、至急医師に報告をし、経過観察か、
人工肛門増設による手術創の自然治癒促進を選択することになります。

 

下部消化管手術は、特に手術部位感染(SSI)や、
腹腔内膿瘍のリスクが高いので注意が特に必要です。

 

排液に膿が出る

 

排液に膿が出る場合は、腹腔内膿瘍を疑います。

 

マイルズ切除術の後や、低位前方切除術後縫合不全などで起きる可能性があります。