看護師さんのためのドレーンの理解と管理講座

気胸ドレーンの管理

(1) エアリークをみる

 

エアリークとは、空気の漏れを意味します。
胸腔ドレナージでは、胸腔内より気体が排出されている状態とします。
胸腔内から排出された気体は、排液ボトルから水封室へ移行し、
水封室の液体で気体として確認されます。

 

排液ボトルの隣にある水封室の液体に、
気泡が出ていることによってエアリークは確認できます。

 

気泡が持続して認められる場合は、エアリークがあると判断します。
呼気時のみにみられる場合は、通常軽度の損傷で、経過観察によって自然に治まることがほとんどです。
呼気・吸気に関係なく持続的に認められる場合は、
損傷の程度が大きいか、ドレーン回路からの漏れの可能性があります。

 

正常の場合

 

激しく出ていた気泡が減少していく場合は正常です。

 

通常は、胸腔ドレーンの開始直後から連続した気泡がみられ、
気胸の状態が改善されていくと、脱気される空気の量が減少します。

 

それに伴い、連続的だった気泡が断続的な気泡へと変化します。

 

このときの気泡の大きさは小さく均一的になります。
胸膜に開いていた穴が治癒すると、最終的に気泡は消失します。

 

患者さんが咳をしたり、清拭や体位変換などを行うと、
胸腔内の空気が一時的に押し出され、大量のエアリークがみられることもありますが、
このときの気泡はすぐに消失します。

 

気泡(エアリーク)の正常な経過

 

ドレナージ開始 → ブクブク・ボコボコと連続的な気泡 → ブクブク・ボコボコと断続的な気泡
→ 気泡の消失 → ドレナージの終了

 

気泡(エアリーク)の異常な状態

 

・ドレナージ直後から、エアリークがみられない
 → ドレーン接続部からの空気の漏れやドレーンの閉塞など、ドレーン回路の気密性の不良が考えられます。

 

・断続的になった気泡が、再び連続的になった
 → 胸腔内で、気胸の再発などの異常が発生した、或いは、ドレーン回路のチューブはずれなど気密性の不良が考えられます。

 

・断続的な気泡がずっと減少しない
 → 気胸が治癒しないなど胸腔内での異常の発生、ドレーン回路のチューブはずれなど気密性の不良が考えられます。

 

ドレーン回路のチェック項目

 

・刺入部の固定に異常はないか。
・ドレーンとドレナージボトルはきちんと接続されているか。
・水封室と吸引圧制御ボトルをつなぐチューブはきちんと接続されているか。
・吸引口(吸引ボート)にきちんと接続され、圧がコントロールされているか。

 

(2) 呼吸性移動をみる

 

呼吸性移動をみることによって、ドレーンの閉塞や閉鎖がなく、
正常にドレナージが機能しているかどうかを判断することができます。

 

呼吸性移動

 

呼吸は、吸気の時に呼吸筋が働き、胸腔内の陰圧が高まります。
それに伴って肺腔内圧が下降し、大気圧より陰圧になって空気が流入します。
呼気の時は、呼吸筋が縮み肺胞や胸壁が弾性収縮し、肺が圧縮されます。
それに伴って肺腔内圧の陰圧が弱まり、肺胞内圧は陽圧となって大気圧を上回ることで肺から空気が排出されます。
そして、胸腔内圧は、常に陰圧です。

 

胸腔ドレーンは、胸腔内に留置されます。
そして、胸腔とドレーン回路とで気密性が保たれているので、
このような呼吸のしくみがドレナージのシステムにも反映され、
呼吸に連動して呼吸性移動がみられます。

 

吸気によって胸腔内の陰圧が高まると、水封室の水が引っ張られ、
患者さんの側に移動します。
ですが、水封されているので、外気が胸腔内に入ってくることはありません。

 

胸腔内圧の陰圧が弱まる呼気の時には、水封室の水は外界側へ移動します。
この呼吸に連動した水封室の水面の動きが「呼吸性移動」です。

 

呼吸性移動は、水封室の細管の水面をみます。
呼吸に合わせて上下に移動しているのがわかります。

 

呼吸性移動がみられる場合は、胸腔ドレーンが胸腔内に存在し、
ドレーン回路の気密性が保たれているということがわかります。
ドレーンの閉塞や閉鎖がなく開通している、つまり、正常にドレナージが機能しているということがわかります。

 

呼吸性移動が発生するのは、エアリークが断続的になってきてからです。
つまり、肺の状態がある程度改善されてからになります。

 

呼吸性移動は、呼吸量と連動するので、改善が進むに連れて
呼吸性移動は少なくなり、最終的にはなくなります。
呼吸性移動がなくなった時が、ドレーン抜去の目安となります。

 

水面の移動の大きさは、呼吸の深さなどによって変わりますが、
大きさは、さほど問題ではありません。

 

呼吸性移動の正常な経過

 

断続的な気泡(エアリーク) → 呼吸性移動がみられ始める → 呼吸性移動が徐々に減少
→ 呼吸性移動の消失 → ドレナージの終了

 

呼吸性移動の異常

 

・呼吸性移動がみられない場合

 

呼吸性移動がみられない場合で、徐々に減少した結果であれば正常化と判断しますが、
肺の拡張や、ドレーンの血栓などによる閉塞や屈曲などによる閉鎖があると考え、対処します。

 

・急に呼吸性移動が止まった場合

 

急に呼吸性移動が止まった場合は、ドレーンの閉塞や閉鎖、ドレーンの脱落、
ドレーンの接続不良や破損が考えられます。

 

皮下気腫

 

皮下気腫は触診でわかります。

 

皮下気腫は、胸腔内の空気が皮下(または胸壁)に漏れた状態です。
触診では、ブツブツとした特徴的な握雪感(あくせつかん)があり、
経路はドレーン挿入創、開胸創です。

 

軽度の皮下気腫であれば問題はありません。
ですが、急激な出現や増強した場合は、医師への報告が必要です。

 

(3) 全身状態をみる

 

@ 呼吸状態

 

胸腔ドレナージの場合は、まずは呼吸状態をみます。
呼吸数や呼吸音、呼吸の深さ、リズム、呼吸困難があるかどうかなどをみて、
呼吸が安定しているかどうかを確認します。
左右差の確認も忘れないようにします。

 

気胸によって激弱・消失していた呼吸音にどのような変化がみられるか、
肺の音を聴診し、確認していく事も大切です。

 

A バイタルサイン

 

バイタルサインをみます。
体温、血圧、脈拍、酸素飽和度(SpO2)に変化や異常がないかを確認します。
採血データがあれば、白血球数(WBC)、赤血球数(RBC)、アルブミン値なども確認します。

 

B 痛み

 

患者さんの痛みについてアセスメントします。
ドレーン刺入部の直接的な痛みだけでなく、ドレーン固定によって生じる痛みや、
ドレナージで体動を制限されることによる身体的な痛みなどがあり、
痛みは患者さんにとって大きなストレスになります。
そして、そのストレスは治療にも大きな影響を及ぼします。
患者さんの訴えや表情、動作などから痛みの有無や程度、
痛みの質などを確認し、痛みが突然強くなったなどの変化があった場合は注意します。
既に鎮痛薬を使用している患者さんには、
鎮痛薬の効果についてもアセスメントします。

 

C 感染徴候

 

感染徴候がないかどうか確認します。
発熱や炎症反応の上昇、刺入部の発赤、熱感、腫脹などが感染徴候です。
胸腔ドレナージは、胸腔内と外界を交通させることになるので、
細菌が入り込む逆行性感染が起こる恐れがあります。
滲出液も感染の原因になります。

 

刺入部の観察

 

ドレーナージボトルや回路に異常がみられない場合も、
刺入部の観察は定期的に行う事が大切です。

 

滲出液、皮下気腫、出血、糸固定のゆるみなどがないかどうか、
固定用テープ貼付部位周辺の皮膚状態はどうかなど観察します。

 

・皮下気腫の有無

 

皮下気腫は、ドレナージが不十分な時に、胸腔内の空気が皮下に流入して起こります。

 

もし、皮下気腫を認めた場合は、小さなものであればマーキングし、
その後大きくなるかどうか経過をみます。

 

・出血の有無

 

出血がある場合は、皮膚の損傷、或いは何らかの異常によって
胸腔内で出血が発生していることもあります。
ですから、出血がある場合は医師に状況を報告します。

 

・糸固定のゆるみの有無

 

糸固定のゆるみは、ドレーンのズレにつながります。
ですから、しっかりと固定されているかどうかを確認します。

 

気胸での排液の正常と異常

 

気胸の場合、排液はごく少量で、淡血性あるいは漿液性でれば正常です。
経過とともに排出もなくなります。

 

血性であればドレーン挿入時の肋間静脈・静脈の損傷が、
膿性であれば膿胸の合併を疑います。

 

一時間あたり100ml以上の血性排液がみられたら、
直ちに対応することが必要です。

 

ドレーンを抜去するタイミング

 

脱気目的の場合は、エアリークの消失と呼吸性移動の減少が、
ドレーン抜去の一つの目安になります。
エアリークの消失と呼吸性移動の減少によって気胸が改善されたと推察できたら、
ドレーンをクランプした後、胸部レントゲンによって肺虚脱の有無を確認し、
虚脱がなければドレーンを抜去します。

 

(4) 術後ドレーン管理のアセスメント

 

肺がんなど、胸部手術後の胸腔ドレナージの目的

 

@ 開胸したことで虚脱した肺を再膨張させる。

 

A 術後に胸腔内に貯留する血液や滲出液を体外へ排出させる。

 

B 出血・縫合不全・感染など、外部から観察できない胸腔内の情報を排液から観察する。

 

排液をみる

 

術直後の排液は、血性から淡血性になり、排液量は術中の洗浄液が含まれるので多めです。

 

術後3日目までは、術直後と殆ど同じ性状、或いは少し淡い色調です。
経過が順調であれば、それ以降の色調は淡血性から淡々血性、
さらに淡黄色の透明、漿液性になっていきます。

 

術直後、持続的に1時間あたり200ml以上の血性排液が見られる場合は、
術後出血が考えられるので、再開胸・止血術が検討されます。

 

排液量が急に減少している場合は、ドレーンが閉塞していないかを
確認する必要があります。

 

異常が考えられる場合

 

・血性の排液が続く、排液に新鮮血が混じっている場合

 

→縫合不全などによる胸腔内での再出血が考えられます。
 出血量に注意します。

 

・排液が混濁した場合

 

→排液が混濁している場合は、感染による膿胸、乳び液の貯留(乳び胸)が考えられます。

 

術後ドレーンを抜去するタイミング

 

排液が減少し、1日あたり200ml以下になってきたら、ドレーン抜去の目安です。
色・性状としては、淡血性から漿液性になります。
膿が混濁していた場合にも、点滴による抗菌薬の投与により
排液がきれいな漿液性になると、ドレーンを抜去することができます。

 

(5) 膿胸ドレーン管理

 

膿胸は、胸膜野炎症によって胸腔内に膿性胸水が貯留した状態です。
抗菌薬の投与を行い、胸水の量の多少に関わらず、
胸腔ドレナージでの排膿と洗浄を行います。

 

排液をみる

 

膿胸は、発症から3ヶ月以内を「急性膿胸」、3ヶ月以上遷延したものを「慢性膿胸」と分けています。

 

膿胸の原因は、気管支瘻(まれに肺瘻)、術中汚染、創やドレーン刺入部からの逆行性感染などが挙げられ、
胸腔穿刺で確定診断を行います。
原因となる菌は、肺炎球菌、レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、嫌気性菌などが多いといわれています。

 

膿胸の予防や治療の方法としては、ドレーン刺入部や手術創の清潔管理、
抗菌薬の投与、胸腔ドレナージを行い、定期的に排液の培養検査を行います。

 

空気漏れがない場合は、胸腔ドレーンから胸腔内を洗浄する事もあります。

 

感染のコントロールがつかない場合や、抗菌薬が無効な場合は、
外科的治療を行うこともあります。

 

膿胸の場合のバルーン抜去のタイミング

 

治療によって膿胸が改善され、排液の培養検査で菌が検出されないことが確認でき、
排液が漿液性のきれいなものになったらドレーンを抜去します。

 

乳び液に要注意

 

排液が漿液性のきれいなものになったにもかかわらず、
食事が開始された途端に、排液が白濁することがあります。
これは、リンパ管に損傷があることで生じる乳び液です。

 

乳び液のもとはリンパ液で、リンパ液は無色透明なので手術中には気づきません。
主成分は摂取された中性脂肪成分(特にカイロミクロン)で、
小腸から吸収され、腸管リンパ管から胸管を経ていきます。
縦隔リンパ節からのリンパ流も、この胸管へ流入するので、
損傷があると、胸腔ドレーンから白色の混濁した排液(乳び液)が出てきます。
胸腔内に乳び液が貯留した状態が「乳び胸」です。

 

絶食や、脂肪制限食などで、腸管から吸収される脂肪成分を原料することが
乳び胸の治療の基本となります。
治癒すると、排液の濁りが薄くなり、漿液性のきれいな排液になります。

 

その他胸腔ドレナージが行われる場合

 

・心臓疾患(うっ血性心不全)

 

胸腔ドレナージは、呼吸器疾患や胸部手術以外に対しても行われます。

 

心臓が血液を全身へ十分に送れない状態を「心不全」といます。
中でも、うっ血性心不全は、血液がうっ滞してしまうので、
血管から血漿が漏れ出し、この血漿が胸水となって胸腔内に溜まってしまいます。
胸腔内に胸水が溜まると呼吸困難になるので、
胸水の排液を目的として胸腔ドレナージが行われます。
この場合のドレーン留置は一時的で、排液量が減少したらドレーンを抜去します。

 

・肝硬変

 

肝硬変の場合も胸腔ドレナージを行います。
肝硬変によりタンパク合成機能が低下すると、低アルブミン血症となります。
低アルブミン血症となると、血管から血漿が漏れ出し、
これが胸水となって貯留します。
胸腔内に胸水が溜まると呼吸困難になるので、
心不全と同様、排液の目的のため、一時的に胸腔ドレナージを行います。