看護師さんのためのドレーンの理解と管理講座

脳神経外科ドレナージをしている患者が急変したら

(1) バイタルサインと瞳孔をみる

 

急変の基本チェックをします。

 

患者さんの状態をますが、以下のような症状がある場合は、医師に報告します。
・血圧や心拍が上がっている。
・瞳孔が開いている。
・瞳孔の開きに左右差がある。
・対光反射の消失が見られる。

 

また、頭蓋内圧が亢進すると、血圧が高いのに、心拍が異常に低下することがあります。
このような症状に注意しながら、患者さんのバイタルサインと瞳孔をみていきます。

 

脳神経外科領域のドレナージを受けている患者さんは、
意識レベルが低下している場合が多いので、
意識状態は、身体所見を中心に確認することが必要です。

 

観察をするときには、血圧、心拍、呼吸回数などのバイタルサインを確認し、
持続的モニタリングをしている場合は、そのデータを確認します。
再出血の場合は、血圧や心拍が上昇することがあります。
また、頭蓋内圧が亢進すると、血圧が上昇し、拍数が下がります。
このような症状を、クッシング現象といいます。
クッシング現象について注意深く観察します。

 

バイタルサインのほかに、瞳孔を確認します。
再出血が疑われる患者さんの場合、脳内の動目神経がダメージを受けている可能性があります。
その場合、通常2.0〜2.5mmほどある瞳孔の直径が、5.0mm程度に散瞳します。
そして、瞳孔の左右の開き方に差がでます。
瞳孔は、瞳孔不同といって、頭蓋内圧で圧迫された片側の瞳孔が先に開くのが特徴です。
さらに、対光反射の消失という症状も出ます。
対光反射の消失とは、目に光を当てても、瞳孔が収縮しなくなる状態です。

 

(2) 神経症状をみる

 

再出血では、手足の感覚障害や運動麻痺が見られ、
頭蓋内圧が亢進すると、頭痛やめまい、吐き気が生じることがあります。

 

運動麻痺が起きていないかを確認します。

 

神経症状をチェックし、今まで問題なく動いていた手足が動きにくくなっていないか、
左右どちらかの手足に麻痺が出ていないかを確認します。

 

・意識がある患者さん

 

意識がある患者さんに対しては、痛みの感覚があるかどうかを訪ねたり、
「左右の上肢、左右の下肢を動かしてみてください」などと声をかけて、
麻痺状態の有無を評価します。

 

・意識がない患者さん

 

意識がない患者さんに対しては、上肢下肢の落下試験によって麻痺を確認します。

 

上肢の麻痺腕落下試験は、患者さんの両手を垂直に持ち上げ、急に離します。
すると、麻痺がある側の上肢は、抵抗なく急速に落下し、
麻痺していない側の上肢は、筋に緊張があるので、顔を避けてゆっくり落下します。

 

下肢の麻痺膝落下試験は、患者さんを仰臥位にして膝関節を45度程度に立たせ、
支えていた手を急に放します。
すると、麻痺がある側は下肢が外側に倒れるか、
膝が落下し、下肢は伸展しながら外旋位を取ります。

 

また、頭蓋内圧が亢進すると、頭痛やめまい、吐き気などの症状が生じる事もあります。
会話ができる患者さんには問診を行い、状態をアセスメントします。

 

(3) 排液のアセスメント

 

排液の色

 

・排液が正常の場合

 

赤い血性 → 淡血性 → 淡黄色 → 無色・透明 と変化します。

 

・排液が異常の場合

 

いったん薄くなった排液の色が、再び赤い色が濃くなります。
透明度が低くなります。
排液が混濁します。

 

排液の色をみる

 

脳室ドレナージは、脳内出血やクモ膜下出血などの出血性病変が起こった場合、
脳室やクモ膜下腔に貯留した血液や髄液(髄脊髄液)を排出することを目的として行われます。

 

クモ膜下出血では、術後14日間は病状が悪化しないかどうか、
注意するべき期間だといわれています。
そして、その間の脳室ドレナージの排液の色の変化が、
病状悪化の手がかりとなります。

 

脳室に留置されたドレーンから排出される排液は、
術後は血性の赤い排液(血液が混ざった髄液)です。
時間が経過すると共に、排液の色は淡血性になり、
さらに時間が経つとキサントクロミーによって髄液が黄色になるので淡黄色になり、
最終的には髄液のもともとの色である無色・透明へと変化するのが通常です。

 

ですが、術後に硬膜外・硬膜下に貯留した血液や滲出液を排液する目的で、
一時的に挿入される硬膜外・硬膜下ドレーンのような閉鎖式ドレーンでは、
このような変化は認められません。

 

例えば、慢性硬膜下血腫の場合は、転倒など血腫の原因となった頭部外傷から
数週間から数ヶ月経過しています。
そのため、硬膜下ドレーンからの排液は、暗赤色をしていることが多いです。

 

いったん薄くなった排液の色が再び血性が強くなり、赤い排液になることがあります。
この場合は、再出血を起こした可能性が考えられますから、医師にする報告します。

 

排液の色によって確認できる重篤な病態として、「髄液感染」があります。
髄液感染は、ドレーンを留置している期間が長期間に及ぶと、
髄液が刺入部から漏れたり、髄液が逆流したりすることがあります。
このように、漏れたり逆流したりすることによって髄液が感染し、感染症を起こします。

 

髄液感染すると、擬血塊などの浮遊物を伴う膿性の排液が認められ、
排液の透明度が低く、混濁しているという特徴的な排液がみられます。

 

髄液感染が疑われる場合は、発熱などの感染に対する全身状態を観察し、
医師に報告をします。

 

(4) 拍動をみる

 

心拍のリズムに同調した、液面の上下運動があるかどうかを確認します。

 

拍動が正常な場合

 

液面に拍動があるときは正常です。

 

脳室ドレナージでは開放式ドレーンを使用しますが、
排液に心臓の拍動に伴う心拍性の変動は認められます。

 

一方、閉鎖式ドレーンの場合は、このような現象は見られません。

 

ドレーンの中の液面を見ると、
心拍のリズムに同調した液面の上下運動がわかります。
この液面の上下運動が、「排液の拍動」です。

 

排液の拍動が認められない場合や、弱くなっている時は、
ドレーンが閉塞しているサインです。
脳室ドレナージで使用されるドレーンは、腹腔などに使用されるほかのドレーンに比べて細いので、
閉塞しやすいという特徴があります。
患者さんの部屋に訪室したときには、必ず拍動の有無を確認するようにします。

 

ただし、脊髄ドレナージの場合は、開放式ドレーンを使用していますが、
脳室ドレーンのような拍動は見られません。

 

拍動が異常な場合

 

液面に拍動がみられない場合は異常が考えられます。

 

拍動が認められない原因

 

@ 出血によって広がった粘性の高い血液によりドレーンが詰まった場合。

 

A ドレーンの先端が脳室壁に当たっている場合。

 

B 排出するべき髄液のある場所にドレーンが挿入されていない場合。

 

このようなことが原因で、拍動がみられないことがあります。
ドレーンが閉塞されるなどして、髄液や血液が体外へ排出されない状態が続くと、
症状が悪化する可能性が高くなります。
ですから、ドレーンの屈曲や挿入部を確認し、ドレーンの環境に問題がなければ
すぐに医師に報告し、迅速に対処することが必要です。

 

胸腔ドレーンなどでは、排液を流すためにドレーンをしごき、
ミルキングという行為を行う事があります。
ですが、ドレーンが細い脳室ドレナージでは、損傷の原因となりやすいので、
ミルキングは行いません。

 

拍動が認められない場合は、ドレーンが屈曲していないかどうか、
挿入部が汚れていないかどうかを確認し、
ルート整理をしても拍動が認められない場合は、医師に連絡します。

 

閉塞を改善するために、医師に依頼し、ドレーンの中を生理食塩水で流してもらうことがあります。
それでも効果がないときは、CT撮影を行い、脳室の変化を確認して、
緊急手術を検討します。

 

(5) 排液量をみる

 

正常の排液量は、一時間あたり20ml以下です。
50ml〜100ml以上の排液が見られる場合は、異常があると考え対処します。

 

排液量が正常の場合

 

正常の排液量は、一時間あたり20ml以下とされています。

 

脳室ドレナージ、脳槽ドレナージ、腰椎ドレナージは、
髄液の排出を主な目的としていますが、同時に溜まっている血液も排出します。

 

健康な人の髄液は、1日約500ml分泌されています。
この500mlのうち、脳室内には常に150mlほどの髄液が満たされていて、
一日に3〜4回入れ替わります。
そして、おおよそ1分間に0.35ml、一時間では21mlが産生されています。
この数値を基準に、ドレナージの予測量を確認する習慣をつけておくことが大切です。

 

頭蓋中の出血量が多ければ排液は大量に排出されるので、
20mlというのは目安で、ドレーン挿入直後の患者さんで血液の排出が多ければ、」
血性の排液が50ml排出されることもあります。

 

機能が回復し、健康な人と同じように患者さん自身が体内で髄液を循環できるようになると、
排液は認められなくなるので、そうなったらドレーン抜去の時期とみなします。
一般的には、髄液の流出量が一日50ml以下になった段階で、抜去することが多いです。

 

排液量が異常の場合

 

排液量が一時間あたり100ml以上になったら、再出血などの可能性もあります。
チャンバーの位置などから、適切な排出圧が維持できているかを確認し、
医師に報告をします。
その上で、医師から排出量の設定変更の指示があれば調整をします。

 

脳室ドレナージのような開放式ドレーンでは、
頭蓋内圧の正常値は、水柱測定で100〜180mmH2Oに設定されています。
チャンバーの位置を上下に動かすことにより圧力を変えて、
排液量を増減させます。

 

例えば、医師からは「設定をプラス5cm上げて」、「設定をマイナス5cm下げて」というように
チャンバーの位置を変更する指示が出るので、
看護師はそれに従い、チャンバーを動かして設定し、
その後、排液量の変化を確認します。

 

その他のドレナージでの排液量

 

硬膜外ドレナージの目安としては、一日200ml以内、
慢性硬膜外血腫の術後に行われる硬膜下ドレナージの目安としては、
一日50〜60mlとされています。

 

(6) 頭部の位置をみる

 

患者さんが頭や身体を起こしたり、ベッドの高さを上げたりすると、
チャンバーに過剰な陰圧がかかるので、オーバードレナージが起こります。

 

オーバードレナージが起こると、出血を助長したり、痛みを生じることがあるので、
看護師は、患者さんの部屋へ訪室したときに、チャンバーの位置や患者さんの頭の位置、
姿勢などをしっかり確認するようにします。

 

意識レベルが低下し、身体をコントロールできない患者さんの場合は、
無意識な体動による危険を避けるために、身体を拘束する必要がある場合も多くあります。

 

その場合、家族に対して身体拘束の必要性をきちんと説明し、
承諾を得ると共に、お見舞いの方の面会時には、シーツ類で隠したり、
看護師が付き添い、一時的に抑制帯を解くなどの配慮をし、
患者さんの状態に接した際、過度の不安を感じさせないようにすることが大切です。

 

(7) クランプの外し忘れがないかを確認

 

発生頻度の高いトラブルの一つに「クランプの外し忘れ」があります。

 

開放式ドレーンは、エアフィルターのクランプがしまった状態になると、
ドレーン内に陰圧がかかるので、オーバードレナージを招きます。

 

また、そのほかのクランプを止めた状態になっている場合も、
適切なドレナージが行われなくなるので、
患者さんの体位変換や処置の後には、必ずクランプが解放されているかどうかを
確実にチェックすることが必要です。

 

クランプを閉じる場合の原則は、患者さんに近い側のクランプから閉め、
終了後は、患者さんの通り排液バックのほうから開けていくことです。
こうすることにより、急激な排液の移動を避けることができ、
感染を予防することができます。

 

(8) 刺入部から排液の漏れがないかどうかを確認

 

ドレーン留置をしているときは、髄液感染のリスクに注意する必要があります。

 

刺入部の観察では、排液の漏れや発赤、腫脹などがないかどうかを確認します。
特に排液が漏れていると、髄液感染の原因になるので注意します。

 

排液が挿入部から垂れていたり、滲んでいたりするのは見てわかります。
ガーゼや頭に敷いた枕がぬれている時は、髄液が漏れている可能性があります。

 

毎日、包帯を交換するときに必ずチェックし、
排液の漏れに気づいたら、医師に報告し、消毒します。
排液はガーゼに吸わせて、漏れた量をカウントし、総量を観察します。

 

(9) 挿入の長さを確認

 

適切な長さが挿入されているかを確認します。

 

手術時に挿入した長さを毎回確認し、ドレーン挿入部の目盛りが、
いつもと変化がないかどうかを確認しましょう。

 

特に脳室ドレンー時では、適切な長さに保たれていることが大切です。
固定されているはずのドレーンが何らかの原因で固定が緩んだり、
ドレーンが抜けたりすることがあります。

 

患者さんの部屋に訪室した時や体位変換時、
患者さんが手術室や検査から帰室したときなど、
ドレーンが適切な長さに固定されているか、
ドレーンを固定した糸は外れていないかなどを確認します。

 

挿入したドレーンの長さがわかるようにドレーンには目盛りが刻まれているので、
訪室した時や体位変換時、患者さんが手術室や検査から帰室したときなどはいつも、
適切な長さのドレーンが挿入され、きちんと固定されているかを確認します。

 

(10) せん妄の徴候の有無を確認

 

手術後、しばらくの間、急に体動が激しくなったり、
せん妄を起こす患者さんも少なくありません。
このような場合、ドレーンを自己抜去してしまう危険性があります。

 

せん妄を起こす前には、普段から接している看護師には、
その徴候が感じられる場合があります。
「会話はできているけれど、話のつじつまがあっていない。」、
「興奮しているような様子で、いつもより視線が鋭い。」など、
いつもとは異なる様子を把握した場合は、チームで情報を共有し、
危険行動に対応できるようにしていきます。